私の本棚 小長谷有紀 さん
「広報とよなか」2015年4月号から連載の「私の本棚」は、豊中にゆかりの著名人におすすめの本、お好きな本を紹介していただくコーナーです。隔月で掲載されます。
第4回(広報とよなか平成27年10月号掲載)
第4回は、小長谷有紀さんの登場です。
越えられない山
本は脳のごはんです。毎日のように食べてきたので、ご馳走の記憶がありません。にもかかわらず「思い出の一冊は何ですか」としばしば質問されます。さあ困った!そこである時は貸本屋さんから借りた児童向けの江戸川乱歩シリーズを答えたり、またある時は自然と人との関係を探求するきっかけとなった『土と文明』や、モンゴルでの家畜と人との関係を調査するきっかけとなった『牧夫フランチェスコの一日』を答えたりしてきました。
そういえば豊中市内に住んでいた小学生の頃、4階建てアパートの共同ゴミ箱から『ある老学徒の手記』を拾いました。著者の鳥居龍蔵とその夫人きみ子さんについて将来、論文を書くことになろうとは...。誠に不思議な、本との出会いですが、さりとて皆さんにお勧めしたい内容というわけではありません。
とっておきのお勧めは別に選びました。戦中、スパイとして訓練を受けてモンゴル人に変装し、大陸を歩いた西川一三さん。その旅行記は民族誌として充実しており、私たち研究者にとって今なお越えられない山です。
思い出の一冊
小長谷有紀(こながや ゆき)
昭和32年(1957)、豊中市生まれ。京都大学大学院修了。昭和62年から平成26年(2014)まで国立民族学博物館教授などを務めたあと、大学共同利用機関法人人間文化研究機構理事に就任。専門はモンゴルや中央アジアの放牧文化。著者には『昔話で親しむ環境倫理』など多数。
文中で紹介された本
『土と文明』
『牧夫フランチェスコの一日』
『ある老学徒の手記』
小長谷有紀さん監修、監訳、編著書
図書館展示コーナーのご案内
お勧めの本や『知的生産の技術とセンス』など小長谷有紀さんの編著書などを、10月の庄内図書館(三和町)をスタートとして、各図書館内にある展示スペースの特設コーナーで紹介します。
図書館巡回展示
10月 庄内図書館
11月 東豊中図書館
12月 千里図書館
1月 野畑図書館
2月 蛍池図書館
3月 岡町図書館
4月 服部図書館
5月 高川図書館
6月 庄内幸町図書館